もっとダメなアイディアを愛そう。ダメなアイディアの愛し方。

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photo by qisur

イノベーションの殆どはよくあるアイディアから生まれる

世の中を変えるイノベーションは、だいたい以下の2つのいずれかだ。

1つは、これまで地球上の誰も思いつかなかったアイディアから生まれたもの。
もう1つは、よくあるアイディアだけど、誰も実現しようと思わなかったことから生まれたものだ。

そして大事なことは、イノベーションの殆どは後者によって生まれるということだ。
カップラーメン、ウォークマン、iPod、どれも世界のけっこう多くの人がぼんやりとは思いついていたアイディアだろう。しかし、それを大量の試行の後にイノベーションとして形にできたのは日清であり、SONYであり、Appleだった。

人は、ダメなアイディアを見つけると、ダメな理由を突きつけて批判しがちだ。その批判は確かに正しいのだろう。でも、そうすると上で挙げた2つの内、大切な2つめのイノベーションの芽を摘んでしまうことになる。だからダメなアイディア対しても批判するだけでなく、欠点の解決方法を考えるほうがいい。

セブン銀行設立時の話を読んでいてそんなことを思い出した。
「無茶だ」社内猛反発 セブン&アイで最も反対されたこと〈AERA〉 (dot.) - Yahoo!ニュース

具体的にどうすればダメなアイディアからイノベーションが生み出せるのかも含めて、今考えていることを紹介する。

カリスマ経営者でも賛同を得られなかったアイディア

セブンの鈴木社長は、強いリーダーシップで社内を率いるカリスマ経営者だが、それでもセブン銀行設立の時は猛反対にあったらしい。

 そんな彼が、最も「無茶だ」「失敗する」と周囲から強く反対されたのは、2001年のセブン銀行設立のときのようだ。鈴木もこう記憶している。

「周囲は皆、素人が銀行をやってもうまくいくはずないという見方でした。メインバンクの頭取さんが私のところへ来られて、『やめたほうがいい。あなたが失敗するところを見たくない』とおっしゃったくらいです」

昔の曖昧な記憶だが、銀行のATMは特に防犯対策で相当コストがかかっていて、それを全部のコンビニに、しかも24時間営業で置くというのは不可能と考えられていたと読んだ気がする。そして銀行の開業には免許も必要だ。

しかし鈴木社長には勝算があった。

「銀行は、土日は休みだし、午後3時に閉まってしまう。私は、家計は妻任せですが、素人目に見ると、近所のコンビニで夜中でも日曜でもお金が下ろせたら、お客様にとって便利だろう、と当たり前のことを思っただけです」
(中略)
「80年代後半から電気やガス料金の収納代行をスタートさせていましたが、取扱件数や金額が年々伸びていました」

つまり、店内でお金を下ろす顧客ニーズを察知していたのだ。

上のような事実から、ニーズがあると考えていたのだ。しかし、それでも賛同者は増えなかったという。

ニーズがあるのに皆が猛反対?

 ただ、そうはいっても金融筋には簡単には理解してもらえない。わずかにATM設置に賛同してくれる銀行があり、共同で銀行設立プロジェクトチームを組んだが、交渉に出向くメンバーは皆、沈んだ様子で帰ってくる。

 その姿に鈴木は、「失敗してもいいじゃないか、失敗も勉強のうちだよ」と声をかけた。「責任はトップがとればいい」と内心思っていた。

ニーズがあることはわかっている。鈴木社長は当然、データを元にニーズについて説明をしただろう。その点については誰もが認めたはずだ。
しかし、それでもなお皆は反対し、鈴木社長は独力でアイディアを実現させた。彼らにはセブン銀行は、ブログの冒頭に書いた、実現できなそうなダメなアイディアに見えたのだろう。

そのアイディアの実施結果はこれだ。
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セブン銀行は2009年3月期のリーマンショックの波にも飲まれず、毎年安定して数百億円の利益を生み出している。

そしてこのアイディアは、人の暮らしも大きく変えるイノベーションとなった。他コンビニチェーンも次々に追随し、コンビニにATMは欠かせないものとなった。

だから、批判が簡単なダメアイディアであっても、容易にあきらめてはいけない。

ダメなアイディアの生かし方

ではどうすればいいのか。私が少しでも優れたアイディアを考えようと心がけていることをまとめてみた。

  • 当たり前のアイディアから出発する

突飛なアイディアから出発する必要はない。すぐ閉まるATMのように世の中は不満で溢れている。それはなぜ解決されないのか。そこから考えればいい。

  • ダメなアイディアを捨てない

ダメなアイディアは、そのままではダメなアイディアだ。実行すると必ず失敗する。だから実行はせずに、ノートに書きためておく。そして時々見返して、思いを馳せるといい。いつか繋がるときが来る。

  • 自分だけが知っていることと組み合わせる

セブン銀行では店内での顧客の動向からニーズをつかんだ。このように自分だけが知る情報と組み合わせれば、いいアイディアになることがある。

  • 自分のアイディアを信じる

セブン銀行では、カリスマ経営者の鈴木社長だったから、周囲の反対を押し切って自力でアイディアを実現できた。でも、自分のアイディアに周囲全員が反対だったら? そんな時は・・・・・・やはり鈴木社長と同じく行動を続けるしかない。そのためには自分がアイディを信じきることが絶対に必要だ。



特に最後は自分にも難しいけど・・・なんとか実践しようとしています。


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セブン-イレブン 終わりなき革新 (日経ビジネス人文庫)

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